minori 『ソレヨリノ前奏詩』 レビュー

総評

相手の感情が読めてしまう主人公と心に絶対的な壁があり読み取ることの出来ないヒロイン、オタク属性が強い面倒見の良い幼馴染、はちゃめちゃで様々な感情が渦巻く後輩ちゃんの3ヒロイン。
主人公の能力もさることながら、ありそうでなかった設定で好印象を受ける。特にOPまでの共通に当たる部分は心に壁のあるヒロイン─永遠との過去から今に至るまでの描写でプレイヤーを惹き込みつつ、OPが流れた時には思わず身震いした。
「言葉の重さ」もさることながら、「シーンの演出」においては他メーカーでは中々味わうことのできない満足感が得られるであろう作品だと思います。
BGMの美しさもさることながら、ありそうであまり見かけない「BGMを消して声優さんの演技のみで魅せる場面」等ここぞ!というシーンでの魅せ方がminoriは本当に上手いの一言に尽きる。
割とヌルヌル動くので他エロゲに比べて必要スペックが高めなのは注意したい所。私個人としては紙芝居を動かして見せる手法は好きなので大いに構わない、むしろどんどん復旧して欲しい技術ではあります。
動きや瞬き髪の動き等にそこまで違和感を覚えませんでした。動くからこそ演出することの出来るシーンというものは数多くあり、この辺りは他メーカーにはない強みなのでは?と考える。
感情を読んでしまう能力や心に壁を持っていたり等はあくまでもオマケ的な要素であり、本作品の神髄…「恋愛」や「愛」について深く考えさせられた作品であった。もしも手にする機会があれば、是非ともやって頂きたい作品です。


シナリオ

 永遠1回目(共通/前振り?)
忌嫌う能力に苦悩していた主人公がある事件を境に遠くへ離れていたヒロイン…永遠と突如電車の中で出会う。
この章で主人公の能力や永遠の能力について、また過去への贖罪…出来事の回想が主となる。
また他ヒロイン…真響やはるかについても、どのようなヒロインなのかが掴みやすい話となっている。
OPまでの話を永遠1回目と捉えているが、OPが流れる直前のシーンでも衝撃を受け、流れた後は思わず身震い…鳥肌が立った。

 真響
真響は王道の幼馴染√で、こんなにも想われてる主人公が本当に憎らしくなってくる始末。
ほんとええ子やで真響ちゃんは…「こういう女性が身近に居たら心底救われるのだろうな」と考えます。
真響√は永遠1回目からの前振りがあってこそ、踏み込むことの出来たお話。また永遠√2回目での主人公に対する一途な想いの描写も素敵でした。

はるか
はるかは波乱万丈の一言に尽きる。前振りがあってこそだろうが素のはるかちゃん可愛いほんと可愛い。時々見せる心の闇っぽさも引き立てるポイントの一つ。
残念な点を挙げるとすれば、もう少し素のはるかからのお話があればなーと思う点と、鍵のオチの付け方だろうか。
素のはるかちゃんがほんとの最後の最後にしか出てこないので、可愛いくて魅力的なだけに実に惜しい。
また鍵についてはオチや台詞が容易に想像出来てしまったからである。

 永遠2回目
時系列的にはありえないけど真響やはるかの振りがなければ主人公がこうも変わる訳がないので、そこは演出の一つだと割り切れれば◎。
2年もの間想い続けていた永遠とのハッピーエンド。エロゲはやっぱりこうじゃないと!と非常に満足したお話。
ここぞ!という時にこういう演出が来ると良いなーと思うところはしっかりと押えられていて非常に良かった。


イベントCG

美しいの一言に尽きる。
枚数も他のゲームに比べて非常に多く感じた。日常シーンとの使い分けが非常に上手くメリハリも付いている。
個人的に評価したいのはエッチシーンでのイベントCGのバリエーション。
何回も分けてやるよりも、1回でのシーンが長い方が印象深くなるしメリハリも付いて良いのではないだろうか。
クオリティも群を抜いてて実用性も高し。
1点不満を上げるなら胸大き過ぎませんか(小声)


システム

スキップが少々遅いかなーと感じた以外には特に不満はなし。
欲を言えば画面解像度をもう少し上げてもい良いんじゃないかなーと思ったけど、これだけヌルヌル動くならそれなりのPC持ってないとしんどそう。


ネタバレ(セリフ等)を含んだ感想。

永遠可愛すぎか…。いや、真響も好きだったけどやっぱりナンバーワンは永遠ちゃん。
最後の方の演出で「だったら、大丈夫。あなたが求める限り、永遠は消えないわ……」の台詞で2年前の永遠から今の永遠に変わるイベントCGの魅せ方とかね。その後に手に持っていた真っ白な本に色が灯るシーンなんかもグッときた。
「この世界にさようならをしよう。壁の中の世界を出て、僕と君の心が触れ合える世界へ行くんだ!」
画面暗転からのPrologueも良さしかない、しかもフルかよ!と聞いていれば感慨深く。
頭の悪い奴が書くような感想になっている感じが否めない。
こうもオープニングとエンディングのテーマ曲が作品に沿ってるというのも数少ないのではなかろうか。
てか永遠√の終わりを見ちゃうと他のヒロインほんと踏み台だなーと残念に思う面も。
いや、あれはあれでifのお話としては良いんだろうけどね…?
永遠√を突き詰めた結果であろうか。
真響ちゃんだってもっと活躍させても良かったやんけ…現実にここまで良い子がいるとは思えない。(そして絶望を味わう)

他人にエロゲを勧める時は大体泣いた奴が多いんですけど、それが全てじゃないんだなーと心底思った。

やっぱりハッピーエンドに涙はいらないよね。
心が満たされた作品でした。